眼底ロード
野村喜和夫
私たちって誰だろう、なぞなぞみたいだけれど、
夜通しあなたの眼底を旅してめぐるのが、私たちの仕事、
道野辺には、昼間のあなたの愚行の痕跡がまだ残っていて、
それを足の裏でスキャンしながら読み取ってゆく、楽しい、
眼底の最も奥深いところには、駄洒落みたいだけれど、
あなたの苦悩が結晶してできた瑪瑙がごろごろしていて、
それを拾って叩きあわせ、散った火花を写真に撮って、
夢見のあなたに送る、楽しい、もちろん朝が来るまえに、
音もなく私たちは立ち去る、なぞなぞみたいだけれど、
そんな私たちって、あなたにとって誰だろう、
(初出:「文藝春秋」2008年4月号)